体験談・真木

 
真木のくらし
 
 スタートは長野県南小谷駅。アップダウンの激しい山道を重たいバックパックを背負って登ること1時間半、こんな山奥に本当に人の住む場所なんかあるのだろうか、と思い始めるころに、ぱっと視界が開け、小さな真木の集落が現れる。

 真木に着くとさっそく何人かが手を振って迎えてくれる。事前訪問以来の久しぶりの再会なのに、名前を憶えてくれていることがとても嬉しい。案内された10日間の私たちの家は、立派な囲炉裏のある大きな家。ヨーロッパから来たボランティアたちは囲炉裏に興味津々で、みんなで顔を赤くしながら火を起こす。10月の真木は朝晩かなり冷え込むので、慣れないボランティアにはなかなか大変だが、有り余る毛布と、真木のリーダー宗さんのくれたホッカイロと、大きな浴槽のあるピカピカのお風呂で、なんとか乗り切ることができた。

 有機農業をやっている真木での今回の主なワークは、米の脱穀、大豆の収穫と選別、茅刈りなど。雨の日も多く、そんな日はみんなでもくもくと室内作業をする。なかなか減らない豆と格闘しながら、みんなで歌を歌ったり、他愛もない会話をしたり。日本語をしゃべれない人、英語をしゃべれない人ももちろんいたけれど、お互いに興味を持つだけで、交流は始まる。

 雨に凍えるこんな日の後の、晴れた日はとてもとても気持ちがいい。さわやかな秋晴れの青空の下、紅葉した木々に囲まれ、雪をかぶった山々を遠くに眺めながら、とても贅沢な気持ちでせっせと働く。何も考えず、ただ自然を体いっぱいに感じながら作業に集中する時間は、都会でのストレスも疲れも悩みも、きれいに洗い流してくれる。
 真木での生活のみんなの一番の楽しみは、3度の食事と午前と午後に一度ずつあるお茶の時間。いつもの時間に待ちに待った盤木がなると、みんなぞろぞろと茅葺屋根の母屋に集まる。炊き立ての釜ごはん、大豆入りのカレー、野菜たっぷりのスープ、色んなバリエーションのサラダ、とれたての卵で作るパンケーキ。真木のみんなが手間暇かけて育ててくれたものたちをいただく、最高の贅沢。何をとっても本当においしく、仕事の疲れを忘れてもりもりと箸が進む。よく食べて、よく働き、よく眠る。それが真木の生活の基本。

 そんな真木では、時間はとてもゆっくり流れているのに、気づけばあっという間に毎日が過ぎていく。一見単調な日々のようだけど、小さな発見があったり、新しい出来事があったり、毎日は変化に富んでいて飽きることがない。駅から遠く離れた山奥だけど、訪れた誰に対してもいつでも暖かくウェルカムで、人と人とのつながりや関わりは都会よりもずっと濃い。誰もが自分にも周りにも正直に生き、長所も短所も全部ひっくるめてお互いを認め合って、補い合っている。シンプルな暮らしが、生きるって何かを実感させてくれる。

 都会に疲れたみなさん、自分を見つめ直したいというみなさん、誰もが帰ってきたくなる、そんな真木に是非一度訪れてみては?

 

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