伊藤翔平さんの履歴書。

2012/08/21

子どもたちを笑顔にしたい。
伊藤翔平さんの履歴書。

名前
伊藤翔平さん
性別
男性
年代
29才(インタービュー当時)
属性
児童養護施設職員
参加国
フランス、日本

満足度100%、活動のやりがい度100%の数字に込めた思いは?

今までにない経験ができたことが大きかったですね。世界がぐっと広がりました。色んな角度から物事を考えられるようになりました。そして何より、活動を通じて自分のやりたいことが見つかり、人生の転機になったんです。

どんな転機が?

特にこれといったやりたいこともなく漠然と生きていたんです。ちょうどその時、地元の友達からNICEのことを聞きました。「中学1年で英語をあきらめた自分が、海外へ行くことができるんだろうか。でも、興味・関心はあるし、思い切って行ってみようかな。」そう思って、参加したのがフランスのワークキャンプでした。様々な人や価値観に触れる中で、今までここしか見えなかった視野がぐっと広がったんですね。改めてその視野で自分の夢を探したとき、今までとは違うものが見えてきたんです。

フランスのワークキャンプから帰国した後に、ちょうどNICEでは秋合宿が開催されていました。3つのワーキンググループがあって、その一つは、神奈川県にある児童虐待を扱っているNGO、CMPN=子ども虐待ネグレクト防止ネットワークの代表・山田不二子さんからお話を聴くグループでした。そのグループのリーダーがかいさん(NICE代表、開澤真一郎)で、僕もそこにいました。その方は、日本で実際に起きている児童虐待について事例を踏まえてお話してくださいました。とてもショッキングでしたね。日本にもこんなことがあるんだと知って、心にずっと残っていたんです。それで次の年に、フィリピンの児童養護施設のワークキャンプに参加することになって、実際に子どもたちと関わって帰ってきたら、いよいよ興味が湧いてきたんです。それで、かいさんと一緒に何かアクションを起こしたいねって話になり、「児童虐待防止チーム」を結成することになりました。

チームでどんな活動を展開できるかと話し合って、最初は「伝える」ことを中心に活動をしていたんですが、途中から児童養護施設で直接子どもたちと関わる活動をしようとなったんです。それで活動を一緒に取り組んでいただける施設を探す為、リスト(神奈川県の児童養護施設一覧)の上から下まで電話をかけました。最初は電話をしても、門前払いですよね。うちは間に合っていますって。電話は20以上の施設にかけたでしょうか。その中で、鎌倉の児童養護施設が受け入れOKの返事をくれました。それから、国際ワークキャンプ@鎌倉を夏に開催し、施設側からもっと来てほしいとの要請があって、週末ワークキャンプも生まれました。僕は個人的にもボランティアに来てほしいと声掛けをしてもらったので、鎌倉の施設には頻繁に通うようになりましたね。そうやって、どんどん、この児童福祉の世界に入り込んで、酪農を勉強していた僕の人生ががらっと変わったんです。

それで、短期大学に入り直したんですね。

そうです。児童養護施設で働くためには、保育士・教員・あとは社会福祉大学に通って児童指導員の資格を取る必要があります。保育士が一番短期間で取得できるので、この大学に編入しました。

保育士の資格を取得した後、現在の勤め先である「こどものうち八栄寮」に入職された伊藤さん。実際にお仕事にされてみて、どうですか?

そうですね。22才から26才になるまで、ずっとボランティアとして鎌倉の児童養護施設で活動させてもらっていたので、特に現実とのギャップ?を感じることはありません。ボランティアをしている時に、イメージをつかめていたので、今も楽しみややりがいを日々感じながら仕事に取り組めています。

日本の児童虐待について教えてください。

日本では児童虐待の数は、とても増えています。一昔前までは、施設にいる子どもの3~4割が虐待を受けていると言われていましたが、今では8~9割となっています。施設に入りきれない子どもたちもたくさんいます。待ちの状態がずっと続いているんですね。待ちになった場合は、児童相談所がいたる所にあるのですが、そこで一時保護されます。児童相談所は「一時」施設であるのにもかかわらず、施設にすぐ空きがでることはないので、2~3ヶ月いる子ども、もっと長くいる子どももいます。

虐待の種類としては、殴るけるもという身体的虐待ももちろんあるんですが、最近多いのは、ネグレクト=育児放棄ですね。ご飯を食べさせない、洗濯をしない、病院へ行かせない等、様々なケースがあります。

子どもたちは18才になるまで暮らします。その後、卒園していきます。うちの施設には、今50人の子どもたちが暮らしていますよ。

今後の夢や展望をお聞かせください。

そうですね。なんですかね。この仕事がなくなるのが夢です。
でもなくならない限りは、目の前の子どもとやっていくしかないかなという感じですかね。子どもが幸せになってくれれば、いい仕事ですからね。子どもを笑顔にしていきたいです。

成長ダイアグラムについて教えてください。

1. 実務的な知識・スキル 4
僕の仕事は児童養護施設で子どもたちのケアをすることなんですけど、専門性、スキルでいうとNICEの活動では付きませんでした。ただ、基本的な知識は得ることができたので、4としました。

2.人・社会とやっていける力 4
ワークキャンプやNICEの活動では、横のつながりが強くなりました。色んな人に出会うことで、柔軟性は磨かれましたね。ただ、日本のいわゆる縦社会の経験はあまりしなかったように思います。だから日本的な縦社会で必要な力はあまり身につかなかったかなという意味で、4をつけました。

3. 自分でやっていける力 5
それまで海外へ行ったこともなく、英語も中学1年で諦めていた僕が、一人で海外へ行き、英語で2週間外国の人と生活をすることができました。行き当たりばったりでしたけど、ちゃんと帰ってくることができました。そういう意味ではやっていける力は磨かせてもらったなと思ったので5としました。

4. 進路・目標 5
これは先ほどお話しましたので、省きますね。

5. 社会への考えや価値観 5
それまでの世界と全く違う場所へ行き、違う価値観の人達と出会うことで、今までの価値観や考えに広がりができました。

6. その後の人生に活きた人脈
今の仕事に直接生きた人脈というのはないですが、今でも付き合っている友達はたくさんいます。小中高大学の友達を考えてみても、NICEを通じて出会った友達が一番多いんですね。影響もとても受けていますので、5としました。

最後に、メッセージをお願いします。

履歴書のメッセージも何を書こうかとても迷いました。書きすぎると宗教団体みたいに感じる人もいるかなと思ったので。

そうですね、僕の場合は確たる思いや熱い思いを持っているわけではありませんでした。先ほども話しましたが、ただ漠然と生きていたんです。それがワークキャンプに参加してみたら、自分のやりたいことが見つかり、視野もぐっと広がりました。人生ががらっと変わったんですね。やりたいことがあるって人は、積極的に参加してください。それより僕みたいに、どうしようかなって悩んでいる人こそ、参加してほしいなと思っています。英語が心配な人もいるかと思います。でも僕以上に英語が話せない人はいないと思いますから(笑)。中学1年レベルもない僕が、リーダーまで務めたんですよ。気持ちがあれば、どうにかなるものですよと伝えたいです。

<おまけ>
行くまでに心配だったことに書いてある、「ホームレスのおじさん達と公園で争奪合戦・コンビニに炊飯器を持っていき、コンセントを借りた」がとても気になったので補足していただきました。

これは、鎌倉の国際ワークキャンプの話しです。国際ワークキャンプはやりましょうとなったんですが、泊まる場所も何をやるかも決まっていない状態でした。それでも参加者募集がスタート。始まる前までドタバタでしたね。実際にワークキャンプが始まって、結局泊まる場所は日ごとに移動することになりました。ある時、旅館に泊まらせていただけたんですね。ただ部屋のみの提供だったので、ご飯作りをどこでやるかという問題が出てきました。そこでNICEの事務所から持参した炊飯器を持って、コンビニの外の電源を借りてお米を炊いたり、ホームレスのおっちゃんが使っている水道を取り合ったり。。そんなこともしました(笑)。海外の参加者は意外と受けいれてくれたんですけど、日本人のボランティアは衝撃だったみたいで、ドギマギしていましたよ。

2012年5月10日(木)@NICEオフィス

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