堀米顕久さんの履歴書。

2012/08/21

※履歴書はこちらからPDFで見ることができます。

モンゴル、韓国(2ヵ所)、日本(2か所)の国際ワークキャンプと日本各地の週末ワークキャンプに参加されている堀米さんにお話をお伺いしました。

―モンゴルの満足度70%、韓国の満足度100%、日本の満足度90%、活動のやりがい度90%の数字に込めた思いは?
初めて参加したモンゴルは、初めての海外、初めての国際ワークキャンプでしたが、ここでは自分の不完全燃焼感が残りました。これはワークキャンプの問題ではなく自分の中の問題で、十分に積極的になり切れなかったんですね。色々な経験をした今から振り返ると、あの時あのキャンプでもっとできたことがあったのに…と思うので、70%としました。

韓国については、単純に「すごく楽しかった!」というのもあるし、またとても刺激になったので、100%としています。あまりに楽し過ぎたので、初参加の2年後に同じキャンプに再参加していますしね(笑)。

このプログラム(=IYC:International Youth Camp。韓国の KNCUというUNESCO系列の組織が実施)には、世界約30カ国から100人以上の同世代の若者たちが集まっていました。特に途上国からの参加者は、国がお金を出してこのキャンプに送り出している、将来その国を引っ張っていくようなリーダーの卵たちでした。彼らは、それぞれの国の未来を背負ってこのキャンプに来て、国際交流・相互理解を深めようとしていたんですね。また、受入れ側の韓国からは、何百人という中から選抜された数十人がこのキャンプを作るスタッフとして参加していました。他の国からも非常にモチベーションの高いキャンパーが集まっていたので、当時まだちゃらんぽらんとしていた(笑)私はものすごい刺激を受けました。「自分たちの手で世界を変えていくんだ!未来を創っていくんだ!」という意志を明確に持って、実際に行動している同世代の若者たちと触れ合って、自分の中のスイッチが入った気がしました。とにかく、何とかして自分を、彼らと肩を並べられるレベルまで高めないとダメだなと思いました。もう日本でのんびりしてる場合じゃない、足踏みしてる場合じゃないぞ、と。

それからはずっと、「あれをしてみよう」「あのスキルを身につけよう」をどんどん決めて、常に走り続けています。本気スイッチが入りっぱなしの状態で、今も駆け抜けてますね(笑)。そんなわけで、自分の中の本気スイッチがONになったきっかけがこの韓国のワークキャンプだったので、満足度はとても高いです。

日本については色々な地域のワークキャンプに参加してきましたが、総じて90%としました。一つ一つ挙げたらきりがなくなってしまうので…。

特に韓国の経験から、自分は日本人としてまず日本を知らないといけないと思ったので、積極的に週末ワークキャンプに参加するようになりました。旅もしましたが、やっぱりワークキャンプで超ローカルな地域に入っていって、地元のおじいちゃんやおばあちゃんと一緒に汗を流したり、肩をつき合わせて飲んだりするからこそ感じること、見えてくることってたくさんあります。

色んな地域にお邪魔して、そこに住む人やボランティアのキャンパーたちと仲良くなって、経験も見聞も出会いもすべて自分の糧になっていますが、一方で「きっともっとできたこともあったはず」と思う部分もあるので90%としました。

やりがい度に関しても同じですね。どこのワークキャンプでも、今振り返ってみると自分はもっとできたことがあったのに…と思う部分があるので、その不完全燃焼分を引いて90%としました。

―韓国の国際ワークキャンプでスイッチが入って、日本を知るために週末ワークキャンプに参加されるようになったとおっしゃっていましたが、NICEのチーム活動や広報活動に積極的に携わろうと思ったのはなぜですか?
韓国のワークキャンプに参加してものすごくインスパイアされた自分がいたので、このワークキャンプという活動をもっと多くの人に知ってもらいたいと思った、というのが一番の動機ですね。自分が楽しかったし刺激を受けたから、他の人もひょっとしたら、知って参加したら同じように刺激を受けて人生観が変わる人もいるんじゃないかと思って。なので、韓国のワークキャンプから帰国後、すぐにどさんこNICE(NICE北海道チーム)のメンバーに連絡を取って、チーム活動に参加するようになりました。

また、NICEのチーム活動等を通じて、組織運営や、外部との交渉などの経験を積みたい、という気持ちもありました。韓国のワークキャンプでは、30人~40人の韓国人キャンパーたちが、全体のマネジメントもプログラム毎のチームビルドもする役割を担っていました。それを見て、「そういうスキル(リーダーシップ・マネジメント・ファシリテーションなど)って大学生だったら、あるいはこの年代になったら、持っていて然るべきだな」と思ったんです。振り返って自分の場合は、地元の子どもキャンプやNICEのワークキャンプに飛び込みでボランティア参加したことはあっても、全体のマネジメントはしたことがなかったですし、また部活動もあまり長く続けてこなかったので、「グループで協力しながら活動する」ということもあまり経験がありませんでした。だから、NICEのチーム活動に関わって、グループで活動したり、外部の組織と連携したり、組織をまとめたりする経験をしてみたいと思ったんです。

―農学部に在籍しながら、NICEのチーム活動や札幌圏内の学生団体をネットワーキングする活動、また子どもキャンプなどに積極的に参加していた堀米さんですが、就職先に選んだのは銀行。なぜ、銀行に就職しようと思ったのですか?
確かに、変なキャリアですよね(笑)。元々、北大農学部に進学した時も、また大学3年の春にモンゴルのワークキャンプに参加した時も、「環境」「農業」「野外教育」をテーマに生きていきたいという想いがありました。でも、韓国のワークキャンプに参加してから、やりたいことはやりたいことでやるとして、でも同時に、自分がこの世界で一人放り出されても戦っていけるだけのスキルを身につける必要があるなと思ったんです。そこで、まずは民間企業に入って最低限のビジネススキルを身につけると共に、自分がこの世の中で広く通用する専門性を身につけるとしたら、金融かITだと考えました。最終的に銀行を選んだのは、銀行であれば色々な会社とお付き合いがあるから、広く世の中を知ることができると思ったからです。また金融に強くなれば、金融業界以外の企業でも働くことができる専門性が身につくし(どんな組織でも経理・財務部門が必要ですからね)、将来自分が何をやるにせよ、活かせる知識・スキルだと思ったのも大きいですね。

―金融の世界に4年半いたそうですが、その後医療の世界(大分大学医学部)へ入ったのはなぜですか?
銀行員1年目の終わり頃、2008年でしょうか。北海道で難病(例えば小児がん)や障害を持つ子どもを対象とした野外キャンプに誘われる機会がありました。そこには医師・看護師をはじめとした医療者や教員、あるいは野外キャンプ経験のある人たちが集まっていました。

この野外キャンプは、「病気の子どもたちの夢を叶える」ということを主眼に置いて活動しており、たとえ病院ではできないことであっても、子どもたちがやりたいと言うことは最大限尊重して、何とかして叶えようとスタッフ全員が真剣に取り組んでいました。それまではあまり外で遊ぶことができなかった子どもたちが、ここでは医療者や他のスタッフが見守る中、安心して思いっきり遊ぶことができるんです。

そこで、私にとっては当たり前だった、「外で思いっきり遊ぶ」ということが当たり前じゃない子どもたちがこんなにたくさんいるということにショックを受けましたし、また、彼らの夢を本気で叶えようとしている大人たちがこんなにたくさんいるということに、非常にインスパイアされました。

私自身、幼少期から地元の子ども野外キャンプに参加していたこともあり、将来はやっぱり子ども野外キャンプや野外教育をやりたいなと漠然と思っていましたが、ここで出会ったような、野外体験をしたくてもできない子どもたちにこそ、その機会を提供したいと考えるようになりました。以降、この病気の子ども向けの野外キャンプには毎年参加していますが、医療者ではない一般の野外キャンプリーダーでは、彼らにできることに限界があることを毎回のキャンプで痛感してきました。そこで、とりあえず自分に医師というスキルが必要だな、と思ったんです。ただ、一定程度銀行員としてのスキルを身につけておきたかったのと、北大時代の奨学金の返済や、医学部に入ってからの生活資金をそれなりに貯めてから、ということで、4年半働いてからのキャリアチェンジとなりました。

―医学の道に進んですぐに、休学をなさっていますが、なぜこのタイミングで休学をしようと思ったのでしょうか。
休学した理由は、一言で言えば、将来の働き方を見定めるため、です。たまたま誘われて参加した「病気の子ども向けの野外キャンプ」から医師を志しましたが、そのようなキャンプを私は一つしか知りませんし、またいわゆる病院や診療所で働く医師の姿も自分はほとんど知りません。日本中・世界中の、病気の子ども向けのキャンプ施設や、医療施設、福祉施設を回って、病気や障害を持った子どもたちを取り巻く状況や、そこで働く医療者たちの姿をこの目で見て、自分の将来の働き方を考えていきたいと思いました。

タイミングとしては、いくつかの理由がありますが、ひとつは、早いうちからそのような将来の働き方をイメージしてから学業なりに臨んだほうが、二度目の大学生活が実のあるものになると思ったからです。また、現実的な話をすれば、休学のタイミングが遅くなればなるほど、医学部の勉強が進んでから休学することになって、帰ってきてから勉強を思い出すのが大変になってしまうという心配もありました(笑)。

また、遡れば医師を志す前から、20代のうちに1年間は、他の何にも束縛されることなく自分のためだけに使える時間を作ろうとは決めていました。病気の子供向けの野外キャンプと出会っていなければ、当面は金融の世界で生きていくつもりだったのですが、その場合であればおそらく、仕事を辞めてMBAや経済学の修士を取りに海外の大学院に入る前後のタイミングで、やはり自分の将来を見定めるために1年間は旅をしていたと思います。その元々の予定の中でも、28歳という今がちょうど良いタイミングでした。

―今後の展望は?
4月から旅(休学)を始めての4ヵ月間で、国内の病気の子ども向けキャンプ施設や医療施設、福祉施設を見て回ってきました。また、医療関係に限らず、フリースクールや野外教育に取り組んでいるNPO等にもお邪魔させていただきました。8月からは、世界を回りながら、世界中の医療施設や福祉施設、野外体験施設等を訪れる予定です。様々な現場をこの目で見て感じて、自分の働き方を決めていきたいですね。

また、帰国して大学に戻ったら、残り4年間の大学生活が待っています。将来のビジョンはビジョンで必要ですが、同時に医師としてしっかりと働ける人間になることが大前提にあるので、まずは真面目に(笑)医学の勉強に集中して、さらに数年は小児科医として働いて、自分が納得のいくレベルまでスキルを身につけたいと思っています。

究極的には、人生のテーマとして「医療」×「自然」×「教育」を目指していきたいと思っていますが、今回の旅を通して自分がやっていきたいと思うこと、また今後の学生生活や、その先に医師として働きながら出会うであろうセレンディピティも大切にしながら、自分が最大限貢献できる分野・場所で生きていきたいと思います。

―ワークキャンプでついたチカラ(成長ダイアグラム)について教えてください。
自分でやっていける力に「5」をつけたのは、「自分でやらなかったら何も動かないんだ」という意識を持つきっかけをワークキャンプで頂いたからですね。「何でもやる」「自分が動く」というのは、ワークキャンプ後の人生全般で常に意識してきたことだし、非常に活きています。

社会への考えや価値観にも「5」をつけました。言葉や宗教や文化を超えて、色んなメンバーが集まって共同生活をしながら、一緒に活動に取り組むのが国際ワークキャンプです。その経験を通じて、みんな確かに違うけれど、でも言葉とか宗教とかも超えたずっと根っこの部分では、別にそんなに違わないんだなと思うようになりました。ワークキャンプに参加する前は、海外に行ったこともなかったので、世界は自分とは関係のない遠いどこかのことだと思っていました。国際ワークキャンプに参加して、どこかの国に行ったり、あるいは世界中から集まったキャンパーと友達になったことで、「世界ってつまり、今出会った彼らのことなんだ」と考えるようになりました。それまでは何となくテレビの向こう側だった「世界」というものが、つまり「固有名詞を持った誰か」(=ワークキャンプで出会った友達)になったんです。そうして、世界を固有名詞で捉えるようになると、社会への考え方や感じ方ががらりと変わりました。どこかで震災や紛争があれば、「あのキャンプで一緒だった○○は無事だろうか?」とまずは考えるし、「どこの国はけしからん!」みたいな論調があっても、「でもあの国にはキャンプで一緒だった○○がいるし、彼は信頼できる人物だったな」と考えます。すべての人が、そんな風に固有名詞で世界と繋がれたら、今世界にあるような相互不信や衝突はきっともっと少なくなるのにな、と思います。

ワークキャンプに参加してきて一番良かったのは、きっとここですね。世界を固有名詞で捉えるようになったこと。つまり世界と友達になれたこと。その結果、ステレオタイプな考え方・価値観から脱却できたと思います。

―最後にメッセージをお願いします。
「ワークキャンプって面白いからとりあえず参加してみたらと思います!!」っていうのは、投げやりで良くないですかね(笑)。

でも、とりあえず参加してみる価値は十二分にあると思います。普通の観光旅行と費用も大して変わらないし、そこでローカルの人と一緒に汗を流したり、世界中から集まった面白い若者たちと肩をたたき合うことは、観光では決して経験できないことだと思いますし。

国際ワークキャンプというのは、一つのきっかけだと思っています。世界のどこかの地域にどっぷりと入って、何か感じることがあるかもしれない。地域の人とたくさん話して、何か思うところがあるかもしれない。あるいは世界中から集まったキャンパーと一緒に生活することで、自分の生き方を改めて考えてみるかもしれない。そんな「かもしれない」のきっかけ。

でもそうして何らか、参加した本人の中でほんの少しでも変化するものがあったら、それはその人のかけがえのない成長ですよね。それがどんな小さな変化だったとしても。

だから結局のところ、「とりあえず参加してみたらいいよ!」としか言えないんですが…(笑)。

…でもきっと「世界」は、あなたと友達になれる日を楽しみに待っていますよ。

2012年7月31日(火)10:30-@NICE全国事務局