本来の里山の自然を取り戻す
「自立」を大切にするワークキャンプ


名前
伊井野雄二さん
NPO法人赤目の里山を育てる会
プログラム名
国際ワークキャンプ 赤目
開催年
1999年~
内容
里山を「育てる」ための、
ナショナル・トラストの森林保全活動
プロフィール
NPO法人赤目の里山を育てる会 NPO法人なばりNPOセンター理事長
㈲エコリゾート代表取締役
名張市立赤目錦生小学校非常勤講師
就労継続支援事業所 赤目の森作業所&PLUS管理者

まず、赤目の里山を育てる会の始まりについて教えてください。

1980年後半のバブル期に、三重県名張市の丘陵地もゴルフ場開発の荒波にさらされました。その対策の一つとして「みんなの善意(お金や物)を出し合って、後世に残したい自然や建物を買い取るナショナル・トラスト運動」を中心とする環境保護運動をやろうとして始めた団体が1996年に設立した赤目の里山を育てる会です。
1997年には念願の「トラスト地」を手に入れて、1999年には三重県の第1号NPO法人となり、現在に至っています。

NICEとの出会いはどんな出会いでしたか?また、なぜ国際ボランティアの受入を始めようと考えられましたか?

1997年頃でしょうか、渋谷のNHK放送センターの周辺で、各地でまちづくりに頑張っている団体が集まって、テント村のような場に、赤目の里山を育てる会も出店する機会を得ました。店の2つ隣にNICEのブースがあり、当時事務局長だった小林和彦さんと意気投合して、NICEの取り組みを知ることになりました。
ボランティアは行き帰りの旅費を工面すれば、世界のどこにでも旅立てるというのにとても魅力を感じるとともに、私たちが守る環境保全型保養施設「エコリゾート赤目の森」を利用して、すぐにでもワークキャンプが始められると思いました。

国際ボランティアを受入された中で、印象的なボランティア参加者とのエピソードを教えてください。

世界各国からのキャンパーが参加して、お国の食べ物が食べられることや細かな文化の違いや、価値観の違いなどを学ぶことができて、「草の根の国際交流」ができたと思っています。また、大きな事故も経験して、そこからの教訓を学び、NICE全体の「作業行動指針」に反映されています。

赤目の里山を育てる会は、設立から20年近く経ちますが、この約20年間の里山保全や環境保全活動の移り変わりなど、どのように伊井野さんは感じていますか。

1960年を境に木材など再生エネルギーから石油などの化石エネルギーに転換されて、日本の里山が見捨てられる状況の中で、近年その存在の貴重さが見直された自然が「里山」です。
つまり、本来の里山の自然を取り戻すためには、そこにある木材を取り出し、利用することが唯一無二の方法なのです。それをこの20年間やり続けてきたのが赤目の里山を育てる会であり、国際ワークキャンプだと思います。
そして、それを着実にやり続けている団体は少なく、「赤目の里山」はそのモデルのようになってきているのが、一番の成果だと考えています。

その中で、NICEと赤目の森との連携も16年目になりますが、これまでの国際ボランティアが具体的にどのような役割を果たしてきましたか?

そうですね。物理的には圧倒的な人的作業での里山保全活動があげられますね。総面積にすると10haもの里山が見事に保全されました。また、日常業務での応援など多大です。文化的精神的には、地域の人たちとの国際交流、若者の発想による赤目の里山を育てる会の事業への協力などがあげられます。

伊井野さんは、里山保全とともに、若者の育成も大切にされ、青年里山フォーラムを若者たちと一緒に計画をされていますが、赤目の森のフィールドで若者たちにどんなことを期待していますか。

そうですね。ワークキャンプに参加してくる青年たちは、真面目で能力が高くて優秀な人たちが多いです。だから、キャンプはそれまでの自分をもう一つ乗り越えられるかどうかを試す場所にしたいと考えています。「理不尽を多く体験」させてやりたいという「厳しさ」もその一つです。
そして、何よりそれを克服・実現できるのは「チームワークの力」です。自分だけ頑張っても、支え合いがないと実り多いキャンプにはなりません。そんなことを日々の作業を通じて学んでもらえればうれしいです。

最後に、今後のNICEやワークキャンプ、中長期ボランティアに期待することはなんですか?

より多くのキャンパーに赤目の森を訪れてもらえるようにお手伝い願いたいというのが一番の思いです。ですから、NICE自身がいつも時代のニーズを実現し、魅力あるものになってほしいと願っています。
キャンパーには、「自立」というキーワードで赤目の森に関わってほしいと思っています。東日本大震災では、エネルギー・食糧・情報等の集中の弊害が語られ、小規模・分散・自立型の未来が模索されています。それは、きっと青年やこれからの未来を担う人たちの「在り方」を指し示してくれるのではないでしょうか。

お忙しいなか、インタビューに答えて頂き、ありがとうございました。(聞き手:上田英司)