地域を育み、人材を育む。
国際ワークキャンプを通して山村塾が伝えたいこと


名前
小森さん
山村塾
プログラム名
国際ワークキャンプ 黒木
開催年
2008年~
内容
『半農×半アート』がテーマ
畑仕事が中心、アート事業を企画運営、農作業、交流
プロフィール
福岡県八女市にある山村塾の事務局長
九州ワークキャンプセンターの副委員長

山村塾の取り組みにについて教えてください。

山村塾は、福岡県八女市黒木町で、都市住民と農山村住民とが一体となり、棚田や山林といった豊かな里山環境を保全することを目的に2軒の農林家を中心に活動をスタートさせました。主な活動は、荒廃した棚田の復田と環境保全型農業の実績を行う稲作体験コース、風倒木被害地における広葉樹の植林などを行う山林体験コースの二本柱を中心に展開しています。私自身は、大学時代に山村塾の活動と出会い、2000年4月から山村塾事務局スタッフとして八女郡黒木町に移住しました。

NICEとの出会いは、どんな出会いでしたか?

2005年に、愛知県で開催された万博、「愛・地球博」のときに、万博と連動をして、ワークキャンプを開催し、一緒に実行委員会にはいったことが最初の連携だったと思います。上田さんや当時事務局長をされていた塚本さんたちと一緒にプログラムの運営を行いました。
実は、その前にも2000年ぐらいでしたでしょうか、黒木町に移住する前に、東京のNICEオフィスにあいさつに行ったことがありました。

そのときは、どんな話をされたのですか?

その当時、山村塾はイギリスにあるBTCV(British Trust for Conservation Volunteers。1970年以降自然環境保全運動を推進しているイギリス最大の環境保全NGO)と連携をして、Conservation Holidaysと呼ばれる環境保全ボランティアのプログラムを行っていました。NICEの取り組みも知っていましたので、何らかの連携ができないかということで、ご挨拶にいきました。

そうなんですね、2005年の万博でご一緒したのが、最初の出会いと思っていましたが、もっと前に小森さんとNICEの接点はあったんですね。イギリスのBTCVと連携をされていて、その後、NICEとも連携をして、山村塾で受入が始まったのは、どんな経緯があったんですか。

愛知のときに一緒に事業を行って、NICEのスタッフの方やボランティアの方とつながりができました。さらに、その時に塚本さんからアメリカで行われている、Conservation Corpsをモデルにして、日本でプログラムをやっていきたいということ伺い、一緒に何かできたらと考えました。
BTCVとワーキングホリデーを実施してきましたが、山村塾も次の段階の模索をしていたときで、NICEと一緒に長期のプログラムをやっていくこととなりました。

実際、NICEと連携を始めて、これまで取り組まれていたイギリス・BTCVのプロジェクトは、どんな違いを感じましたか。

大きな違いとしては、参加する人たちの層が若干違うなと感じました。イギリス・BTCVは、イギリスの団体なので、イギリス人の方が申込をされていますが、年齢も高めの大人のボランティア層を開拓しているということがあったと思います。ただ、初めて活動をする人たちもいらっしゃいました。
NICEが行うワークキャンプは色んな国の人たちがごちゃまぜで参加をされるので、運営面への配慮が増える分大変さもあったけど、とても活気があってよいと思います。
また、イギリス・BTCVは、環境保全を専門とする団体でしたので、山村塾は、スキルとして、遊歩道整備の技術。ノウハウとして、ボランティアのリーダー育成という考え方を移転してもらいました。イギリスで培われてきたスキル・経験・ノウハウは非常に貴重なもので、今度は、山村塾がそれを活かして、独自のプログラムを展開していけるきっかけになったと思います。

現在、山村塾では、NICEと一緒に、80日間ワークキャンプと、20日間のワークキャンプの両方を実施されていますが、それぞれのプログラムの特徴を、受入側としてどんな風に捉えられていますか?

80日間のワークキャンプを受入し始めて一番感じているのは、地域の変化でした。これまでのイギリス・BTCVのプログラムでも、2週間ほどのプログラムを行ってきていましたが、関わっている地域住民の人たちは非常に喜んでくださっていました。しかし、接点が少ない地域住民の方とは、なかなかつながりを作れていませんでした。
80日間のワークキャンプをはじめていくと、どんな形であれ、地域の人たちとの接点は、必然的に増えていきます。80日間、地域に滞在をしますので、春に来た人たちは夏の季節に帰っていき、夏すぎに来た人たちは、冬の始まりの季節に帰っていきます。農山村の暮らしのリズムと密着しながら過ごしていきますので、それぞれの季節の行事にも参加をしていきますので、地域住民との接点も、必然的に増えていきます。今まで接点をつくれていなかった方からだんだんと、
「どんなものを食べているの?」
「どんな生活をしているの?」
など、住民のみなさんのほうが関心をもって、近づいてくださるきっかけとなりました。
これまで山村塾の取り組みで一番伝えたかったことを、80日間のワークキャンプが、住民の方に伝えてくれたと感じています。
20日間の短期のワークキャンプは、また持ち味が違っていて、短期集中型で瞬発力のあるプログラムを期待しています。遊歩道整備や、農繁期のサポートなど、成果をしっかり作っていくというやりがいを参加者も感じてくれていると思います。

これまでのプロジェクトで、一番印象に残っていることはありますか。

何年か前になりますが、あるとき、田んぼの作業を外国人と、日本人のボランティア15名ぐらいで作業をした日がありました。その晩に地域の人から電話がかかってきまして、70~80歳ぐらいの地域おじいさんからの電話でした。最初に電話を受けたときは、何か悪いことをしたかなと思いましたが、実際はまったく逆で、感謝の言葉の電話でした。
作業を行った田んぼは、そのおじいさんの手伝いではなかったのですが、その方は、一日私たちのボランティアが田んぼで働いている姿を見ていたそうです。山村塾としては、日本の農山村で、外国の方も含めて、様々な人たちが田んぼで作業を行うというのは、不思議な光景に地域の方には映っているのかと思っていました。しかし、そのおじいさんからは、「懐かしい」という言葉がありました。
昔は、子どもから大人まで、みんなで田んぼで草取りをして、田んぼにたくさんの人たちが集まって働く姿がありました。しかし、今は機械化が進み、農薬によって作業は、簡単になりましたが、人が集まらなくなってしまった。今日は、みんなが働く姿をみて、昔を思い出して、懐かしくなったという話でした。
田舎で働くというメッセージを、地域の方にも伝えることができて、ワークキャンプのやりがいを感じた瞬間でした。

今後の、NICEのワークキャンプに期待すること

20年以上、日本の農山村でワークキャンプを実践されてきて、地域に根付いているという印象があります。まさに、地域をはぐくみ、さらに人材をはぐくんでこられてきました。地域に移住したり、様々な形で地域にかかわったりしてくれている人がたくさん増えました。
今後、その人たちが、もう一段階進んで、社会をつくる担い手となってほしい。地域の方、参加者の方、新しい次世代の人たちが、融合しあって、新たな変化や発展を期待しています。

これから新規開催をする方々へ向けて、一言アドバイスをお願いします!

最初はうまくいかなかったことも、3年継続すると課題が解決され、地域の中に協力者が出始めます。いろいろな方々を巻き込みながらそれぞれの地域の魅力を活かしたプログラムをつくりましょう!