東日本大震災から気仙茶を守る
家族のようなつながりを国際ワークキャンプで


名前
菊池司さん
気仙茶の会
プログラム名
国際ワークキャンプ 陸前高田1
開催年
2012年~
内容
「気仙茶」の手入れ作業・りんご畑の整備
牡蠣の漁業のお手伝い、児童館での「世界の遊び」の企画・運営等
プロフィール
岩手県陸前高田市出身。団体職員として40年勤務し、58歳で退職。退職後は農業者として米崎りんごの生産をしている。平成23年3月11日に東日本大震災を体験。翌年の7月に北限のお茶を守る気仙茶の会を結成。現在はJAの役員をしながら、米崎りんご生産、気仙茶の会の活動を行っている。

気仙茶の会について教えてください。

岩手県南部沿岸地域を気仙地方と呼びますが、その地域で栽培されるお茶です。気仙茶は一般的なお茶のイメージでは、壮大な畑に生産されるものですが、ここのお茶は畑の境界や斜面を利用して植えられているものがほとんどです。よって、植えたあとはそのまま手入れをしていくものになるので、樹齢が200年以上のものもあります。震災以降、福島原発の事故によって、気仙茶も基準値以上の放射性物質が検出されてしまい、このままでは気仙茶が消滅してしまうという危機感から、気仙茶の会を立ち上げました。

そもそもNICEとの出会いは、どんな出会いでしたか?

震災直後から、NICEさんは災害ボランティアセンターを通じてボランティア活動をされていて、活動拠点を近所の古寺で展開されていました。当時、私たちの自治会館には100人くらいの津波による被災者が生活をしており、いつもお寺の前を通って、自治会館の様子を見に行っていました。若者たちが支援にきているのは知っていましたが、どこの誰かも知らないなかで、当然挨拶もなかったので、知ろうとも思わなかったです。

当時の陸前高田の状況から、NICEもお寺をお借りしてはいたものの、地域との連携をどのようにつくっていっていいのか、手探りの状況だったと思います。

翌年の2012年もお寺を拠点として、ボランティア団体がきているなと思っていました。おっ、今年は外国人もいるんだなぁとそんな感じでした。
滞在しているメンバーは、夏前ごろに、お寺の近くに住む方が所有する野菜畑を借りて、野菜をつくるために鍬などもって耕そうとしていました。しかし、隣が私の畑の果樹園なもので、畑は固いし、小石が多くて、手作業では難しいのではと知っていましたので、じっと眺めていました。なかなか捗らないことに、見るに見かねて、家の耕運機をもっていき耕して、畝をつくって、種をまく作業を手伝ったことから交流がスタートしました。結果的に、彼らとは家族同様の付き合いをさせていただきました。

そのような出会いが始まりだったのですね。

最初は個人から始まりましたが、だんだんと近隣の地域の人たちとの交流が始まり、夕食会、カラオケ、地元の温泉など、家族のような付き合いになりました。
そのタイミングと同じ時期に、気仙茶の会が立ち上がりました。気仙茶の会は、お茶づくりの人たちたけでなく、市外や県外、職業もばらばらの人たちが会員になっています。よって、活動計画を立てても参加者が少ないこともありました。そこで頼りになったのが、NICEの存在でありました。気仙茶の伝統文化の継承という意義を共感していただき、作業を手伝ってもらいました。

NICEのメンバーへの印象は変わりましたか?

この若者たちはボランティアだそうだが、本当なんだろうかと半信半疑だったというのが、本音でした。しかし、一緒に作業をしたり、交流したりすることによって急速に距離が縮まって、気心も知り、真面目に取り組む若者たちだったことが分かりました。今までの疑いがすっとんでしまいました。いまでは、気仙茶の手伝いだけなく、りんご作業の手伝い、自治会の共同作業など、こちらの要望に応じてプログラムに入れてくれるようになりました。受入側もきてくれることを楽しみに待つようなってきました。
彼らが使うお寺は、しばらく使っていなかったところなので、電灯がつくようになって明るくなったし、地域では若者が少なくなって寂しいのですが、一時的でも若者がきてくれることは嬉しいことです。また、田舎では外国人のかたと出会う機会はなかったのですが、外国の若者とも交流ができました。

菊池さんの生活にも変化があったわけですね。

ワークキャンプのお陰で、若い人たちと交流をするために、メールやFacebook、LINEなど、スマートフォンをつかって、イギリス・フランス・メキシコ・アメリカの方たちと交流しています。今年は、あるフランスからの男性が、私が紹介した日本の女性と結婚の話まででており、嬉しく思っています。

NICEに期待すること

私たちは陸前高田に暮らしているのですが、被災地の状況がうまく伝わっていないということを感じています。仮設住宅で暮らす人たちも市内にはいらっしゃって、復興の手前の復旧も十分にできていません。まだまだ支援が必要なんです。ぜひ、みなさんに現地に足を運んでほしいと思います。地域と交流しながら、文化や産業、課題に触れ、語り合いながらいろんな解決策の糸口を見つけて行ければと思います。皆さんが来て頂くだけで、元気を頂けるし頑張れる。皆さんの力と声が後押しとなって、復興への強い力となってくるのです。期待しています。

お忙しいなか、インタビューに答えて頂き、ありがとうございました。

最後に、さまざまな企業や、災害ボランティア・NPO活動サポート基金の助成などたくさんのご支援があり、NICEの東北震災支援が現在もなお続けることができています。ありがとうございます。今後もNICEでは、長期的な視点を持ってさらなる活動に努めていきます。