人の動きが活発な町
京都府和束町での取り組み


名前
中井章洋さん
わづか有機茶業栽培研究会
プログラム名
国際ワークキャンプ 和束
開催年
2000年~
内容
お茶をテーマにした公園機能
機栽培の試験圃場としてのティーパーク整備・推進
プロフィール
1956年京都府和束町生まれ。茶舗圓通代表。「安心して飲めるお茶」を心がけ、栽培しているお茶はすべて無農薬にこだわる。現在は国際ワークキャンプの受け入れ団体である、NPO法人わづか有機栽培茶業研究会の理事長を務める。

わづか有機茶業栽培研究会のことを教えてください。

1998年の設立で、地元農家の若者5名からスタートしました。同時に学生との交流が始まり、まず学生の援農バイトを募集しました。内容は後継者不足な地元茶農家の農繁期に手伝ってもらうという活動をしてもらっていました。当時は産地表示の義務がなく、他の産地のお茶が宇治茶として流通されている時期でした。その後、自分達で主導して、流通させられるお茶作りを目指し、それを慣行栽培ではなく、有機栽培への取り組みを始めていきました。始めの数年は鳴かず飛ばずでしたが、有機JAS法が施工されることが分かり、若手のメンバーが増え始め、それからNICEとの付き合いが始まりました。

NICEとの出会い、きっかけはどんな形でしたか?

京都新聞の支社に、ごまさん(初代NICE関西事務局長)の先輩がおり、その人を通じてごまさんを紹介してもらったんです。私達からしてみたら『ワークキャンプとはなんだ??』というところからでしたが、元々行っていた援農バイトがなくなってしまい、『このワークキャンプが手伝ってくれるのではないか!?』となり、一度ごまさんに会って話を聞いてみようかとなりました。ごまさんに海外のどこかで活動している写真を見せてもらい、さっぱりわからなかったけど、『とりあえずいっぺんやってみようか?』となりました。どういう人達が集まってくるのか分からず、『ヤンキーとか来るのかなー?』と心配でした(笑)。しかし、やって来た若者達は礼儀正しくて、素晴らしい!ビックリしました。『今時こんな若者がいるのか?』と話題になったのを今でも覚えています。僕ら自身がカルチャーショックを受け、僕らの若者たちを見る視点が変わりました。その素晴らしさに惹かれて、ワークキャンプを定期的に行っていくことになりました。
しかし、我々はボランティアということに対して知識がなく、どのようにやったらいいのか分からなかったんです。私達には『ボランティアのボランティアにはなりたくない』という精神があり、ごまさんとは何度もぶつかったりしましたね(笑)。その後、ワークキャンプの内容はメンバー農家の応援もあり、和束という町自体の活性化に一役買うような方向性ができたと思っています。当時和束の有線テレビで、ワークキャンプの様子が放映されることがありました。僕らもインタビューに行ったのを覚えています。
それまでは海外の若者がこの町を歩くということが滅多になく、外国人を軽トラに乗せて移動していく姿に町のみんながビックリしていました。良い刺激を与えて頂き、ボランティアに対して『何をお返しできるのか?』、『来た目的に対してちゃんと答えられているのか?』、自問自答しながら、毎年続けてきて、2018年で18年目の開催になります。

17年やってきて、具体的な成果はどのようなものがありますか?

有機茶業研究会が町から感謝状を頂きました。私たちの活動が続けてこられたのはNICEのおかげです。この小さな山間地の、お茶というひとつの産業を中心とした価値観を、国内外から人が来ることで、様々な視点から見ることができ、この近隣では最も人の動きが活発な町になっています。そんな彼らに刺激を受けて、町内の若者がどんどん新しいチャレンジをしています。
他にも、これまでにワークキャンプを通して、4名が移住&結婚しています。ひとりは中長期ボランティアの受け入れもやってくれています。ワークキャンプを始めた時には全く想像できなかったことです。地元の若者と結婚してくれるというのは、ありがたかったですね~(笑)
そんな外から来た人達が頑張ってくれているし、馴染んでいるのは嬉しいです。人に入って来てほしいけど、気安く住める家がなかったんです。最近は移住プロジェクトというのもできて、人が入り安くなりました。また、援農バイト『わづかな時間』というも最近始まりました。これらもNICEがきっかけになっているとも感じます。

これまでで一番印象に残っていることは何ですか?

そりゃ一番最初のワークキャンプやろな~(笑)。毎日が手探りでした。毎晩酒飲んで(笑)これだけよく色々な国から来てくれた、しかも自費で、ひとりで。これは衝撃だったし、本当に素晴らしいと思います。和束に来てくれた子達が、ちゃんと得るもの得て帰ってくれたら嬉しいです。最後に涙を流して帰ってくれる子がたくさんいて、今後もそうあっていきたいなと思います。
ここ数年、ワークキャンプメンバーは盆踊りにも参加してもらっています。地元の人達だけでなく、外国人がいたら地域の人達も嬉しいです。毎年参加者に盆踊りを気にいってもらっていて、スペインから来たファンマは2年連続で参加し、浴衣を着て踊りまくっていました。彼なんかワークキャンプが終わった後も私に会いに家にやって来て、一緒にすき焼き食べたりしたこともありました。こんな田舎にいて、スペイン、ギリシャなど色々な国に友達がいるなんて。こんな嬉しいことはありません。ドイツから来たオリバーは2年連続参加したのですが、友達から原チャリを借りて東京からやってきました。長期休暇が1ヶ月ある時には、私の家のお手伝いに来てくれました。こういったつながりもNICEのおかげです。

最近はぼらいやーの事前研修も受け入れてくださっています。

一期一会、人と人のキズナが結ばれているのを改めて教えてもらっています。 どんな生き方も素晴らしいのですが、『一年間取り組んでいく』という貴重な体験をなされる人達に関わらせてもらっています。私は無事を祈らせてもらうことしかできないけれど、それをさせてもらっているのはありがたいと思っています。ワークキャンプ、ぼらいやーを通して、和束に戻ってきてくれる。そういったきっかけを頂けて感謝しています。

今後はどのようなことをしていきたいと考えていますか?もし課題もあれば教えてください。

地元の若者がワークキャンプに参加していけたら良いなと思っています。実は自分の息子も、部分参加を一度、その翌年にフル参加したことあります。若い茶農家にも声かけで参加したこともありました。それなので、色々な国の参加や地元の小学生や中学生たちが交流していけたら良いな~と思います。
ワークキャンプにしろ、ぼらいやー参加者にしろ、一人一人目標をもってきているので、それに対して何ができるか、どう応えていくか。それにより、また和束に来てもらえるようになったら嬉しいです。
課題としては、本来ならば次の世代にバトンタッチしていかなければならないのですが、メンバーみんな仕事が忙しく、なかなかうまくいっていないのが正直なところです。

今後のNICEに期待することは何ですか?

永遠と続けて頂きたい。これまで培われてきたことが、人との交流が、少しずつ太くなっていく。クモの巣状に広がっていく。それは地元の産業にもつながっていく。その先に和束のお茶を生産する人、消費者にもつながっていく。そんな形で和束を応援して頂ける人がひとりでも増えていけばうれしいです。町長も応援してくださっていますよ(笑)

インタビュー時は、ぼらいやー17期生の事前研修を受け入れてくださっている最中でした。ボランティアワークの受け入れ、交流会・フェアウェルパーティーにもフル参加して頂き、中井さん直々にお抹茶をたててくださったりなど、何から何まで中井さんにお世話になりっぱなしでした。本当にありがとうございました。今後もよろしくお願い致します。(聞き手・井口育紀)