加藤琢真さんの履歴書。

2012/08/21

志高く、団体立ち上げへ。
加藤琢真さんの履歴書。

名前
加藤琢真さん
性別
男性
年代
30才(インタービュー当時)
属性
GLOW代表理事
参加国
イタリア、モンゴル、インドネシア、インド、ウガンダ、日本

そもそもNICEを知ったきっかけは?

それまで海外に行ったこともない自分でしたが、同じサークルのワークキャンプに参加するというのを聞いて、自分も行きたいと思いました。ただサッカー部を大学1年生からやっていたので、休みがすぐにとれませんでした。それでもずっと行きたいと思い続けていて、ようやく大学2年生の夏に2週間休みがとれたので、イタリアのワークキャンプに参加しました。そこで今まで知らなかった世界を知り、これは!と思って、サッカー部を辞めたんですね。頭を丸めてやませさせてくださいって(笑)。サッカー人生だったので、辞めるのも怖かったですが、これからは世界をもっと広げたいと思ったんです。ワークキャンプの刺激があまりにも強すぎたんですね。

どんな刺激があったのですか?

自分が考えていないことを考えている人が、たくさんいることにまず驚きがありました。その人たちは社会の為に行動を起こしている人で、単純にかっこいいなと思ったんです。それと、色んな国籍の人と一つの目的に向かって何かができるという素晴らしさも感じましたね。

ワークキャンプ参加後についてお聴きします。満足度90%、やりがい度70%の数字に込めた思いは?

11回のワークキャンプを通じて、自分がどれくらい成長できたのか、どれくらい今後の仕事に活きる経験ができたのかを考えると、満足度は90%ですね。満足できないこともあったし、もっとこうしたいという気持ちが、100%にはならなかったんだと思います。10%残しておくことで、次の活動へのモチベーションとなりました。

やりがい度は、リーダーとしてリーダーシップを磨く部分があったり、興味があるものは少しづつ吸収させてもらったことが高さにつながったと思います。、逆に一つの活動にずっと専念できたわけではなかったんですよね。他にもステップアップを考えた時に、足りないこともあったと思います。長く関わっていたのでイタリアに参加した時のやりがい、途中、そしてリーダーを務めた時のやりがいは全て違いますが、それでも本当に多くの社会問題に関われたという点に関しては、自分としては厳しめの評価をするタイプですが、70%は高めの数字をつけさせてもらいました。

ワークキャンプを通じて得た力について教えてください。

ダイアグラムの「実務的な知識・スキル」だけ4を付けたのは、他の項目と比べると相対的に少ないかなと思ったからです。現在は医師として専門的な事をやっていますが、直接この分野では活きてないですね。ただ最初に参加したワークキャンプは環境のもので、帰国後もアジボネ(森林・文化保護等でのアジア共同アクションの企画・実施をするNICEのチーム)の活動を通じて知識を深めました。児童虐待対策チームにも顔を出して、福祉の勉強もしました。医学以外のことについては、たくさんの知識を得られましたよ。

その他の項目で特に影響を受けたのは、「2)人・社会とやっていく力」、「3)自分でやっていける力」、「4)進路・目標」ですかね。

人・社会とやっていく力の例で挙がっている「協調性・柔軟性・寛容さ・伝達力・社会性・ユーモア力等」は、全部磨かせてもらったと思います。学級委員以外で、リーダーシップをとるのは初めてだったんですよね。色んな人をまとめるためには色んな視点や能力が必要で、経験をすることで徐々に磨かれたと思います。

単純に生きる力がつきましたね。電気もガスも水道もない所で、どうやって生活していくかということがわかりました。今は医者としてザンビアに関わっていますが、普段は都市にいますからそこまで過酷の生活を強いられることはありません。でも現場の現状を知りたいときは、田舎に入って一緒に生活することが必要になります。そういう時、自分は抵抗なく地域に入り込める自信があります。どこでも生活できるという力は、とても役立ちますね。

他には、行動力ですかね。高校まではサッカー一筋の生活でしたので、社会に目を向けていませんでした。社会問題に興味がない、というよりも自分が関われるものだと思っていませんでした。ワークキャンプを通じて、社会の問題が実は自分と関わっていて、自分にも取り組めるんだと気付かせてくれました。特にウガンダでのヘルスケアのボランティアが大きかったです。初めは団体を立ち上げる気はなかったけれど、エイズ孤児に対してみんなが何かをしたいという気持ちになったのと、他にエイズ孤児に特化して活動をしている団体が無かったので、少しでもやれることから始めようと思って、エイズ孤児支援NGO・PLAS (プラス)を2005年に立ち上げました。立ち上げ時はNICEにもサポートしていただきました。NICEは他の組織と比べると、やりたいことをサポートする体制が整っていました。自分がこうしたいという気持ちを大切にしてもらえたのはすごくよかったですね。これからもそんなNICEでいてほしいと思います。

加藤さんの人生についてお聴かせください。そもそも医師を目指したのは?

色んなモチベーションが合わさって医師を選びました。一つは学問的な、医学的な興味がもともとあったことですね。もう一つは、サッカー部時代の体験が影響しています。最後の大会前に、すごく大きなけがをしたんです。その時二通りの医者がいました。一人はドクターストップをかけて、辞めましょうという医者。もう一人は、何とか大会に出られるようにテーピングや痛み止めを出してくれた医者。自分のやりたいことを尊重してくれる医者っていいなと、その時感じたんです。他には、自分のおじいさんを亡くした時に、長い70~80年という人生の終わり方が、こんな形でいいのかなっていう思いがありました。自分だったらもうちょっとできることがあるんじゃないかって気持ちになったんです。それで医師になることを選びました。

医師になると言っても、どういうところで働くかも重要ですよね。自分はできるだけ患者との距離が近い場所、離島等で働きたいと思っていました。Dr.コトが出てきた時は、俺がやりたいことをよくマンガにしてくれた!って思いましたね(笑)。

医師として国際医療の分野で働きたいと考えるようになったのは、ワークキャンプに影響を受けています。モンゴルやインドネシアに参加しているときは、まだ医師として国際協力に携わるか決められていない状態でした。その時は、経済発展すれば医療や福祉は自国内で発展できることなんだと考えていたので、自分が外に出る必要性を感じなかったんですね。でもウガンダは違いました。アフリカの置かれている状況は、そうやって自国内で解決できるものではありません。この10年、20年の間で変わるような状況ではないし、AIDSによって若い労働力が割かれていて、国自体が経済成長できなくなっているんですね。根源をやられているんです。これは今すぐ行動を起こす必要があると感じて、PLASも立ち上げましたし、自分自身も医師として国際協力の分野に関わることを決めました。

それで、NPO法人GLOWを立ち上げたんですね。立ち上げの経緯をおきかせ下さい。

先ほども話しましたが、もともとは日本の地域医療、医療過疎地域(離島等)で医師として働きたい気持ちを持っていました。その思いはすたれることなく今も持っていますが、海外に目を向けてみると日本と同じ状況にある地域がたくさんあることに気づきました。日本も海外も、医者や看護師が足りない状況は同じですし、先端医療ではない、地域の生活にフィットする医療や保健が必要なんですね。自分自身が医師になってから務めた佐久総合病院は、プライマリヘルスケア(誰もが医療にアクセスできるようにするためにはどうするか)の視点を持って活動している病院でした。その視点は海外でも必要だと感じたんです。

国際協力に携わりたいという医師や看護師はたくさんいます。ただキャリアプランが描けないので、自分がどう国際医療と関わっていけるのかの道を見出せないんです。一方、JICAやNGOは海外で活躍できる医師が少ないと訴えています。海外で活躍できる医師が今すぐ必要だと。この需要と供給のミスマッチはなんだと疑問に感じたんです。ミスマッチが起こる原因が何かと考えていくと、海外で医師や看護師として最初に経験を積ませてくれる場所・フィールドがないんですね。それをうちの団体が様々なNGOやJICAと協力しながら、研修の場を提供することで、志がある医師や看護師がちゃんと必要とされている世界で活躍できるようになればと思って、GLOWを立ち上げました。

今後の夢や展望は?

一つはGLOWの理念がまさしく自分の夢で、志がある人の後押しをしてあげたいことですね。また高校生の時から抱いている、医療過疎地域にも何らかの形で貢献していきたいです。実は来週は、鹿児島県の離島で、新生児マニュアルを作成する仕事をしてきます。毎月20人くらい妊娠・分娩・出産があるにも関わらず、小児科医がいないんですね。マニュアルがあれば、新生児のことをあまり知らない医師もこうすればいんだってわかりますし、応急処置ができます。ちょっとでもやれるところから、取り組んでいきたいです。

後は、ちゃんとした家庭を築くことですかね。早く親に孫の顔を見せたいです。私の父親は幼稚園の園長なので、私より年下の子たちが産んでいる子どもを見て、うちの子は何をしてるんだ!なんでアフリカなんかに行くんだって思っている見たいですから(笑)。

最後にメッセージをお願いします。

最初の一歩を踏み出すのはとても勇気のいることですが、その一歩がとても大切です。

自分も最初は本当に無知でしたが、行動を起こしたことでぐっと世界が広がりました。自分のやりたいことも見えてくるし、やれることも分かってくると思います。少しでも何かひっかかることがあるのであれば、インスピレーションを大切にして行動を起こしてください。

2012年5月18日(金)@NICEオフィス

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