穴竃美和さんの履歴書。

2012/10/01

穴竃美和さんの履歴書はこちらをご覧ください。

学生時代に出会ったワークキャンプを職にし、その後愛知県長久手町の地域を元気にする活動に取り組み、その後現在は京都府相楽郡和束町へ移住をした穴竃美和さんにお話を伺いしました。

満足度100%、活動のやりがい度80%の数字に込めた思いは?

覚えてないです(笑)。何の満足度だったっけ?もっとやれた感があったからだと思います。
大学4年生の時に参加したタイのワークキャンプで、活動内容が、ボランティアのためのものになっていて、地域のニーズに基づいていないと感じたからです。でもこの経験のおかげで、NICE職員になってワークキャンプを企画するときにはいつも「本当に地域の役にたっているか」を気をつけるようにしていました。

成長ダイアグラムについて教えてください。
初めて国際ワークキャンプに参加をした21歳の自分と今の自分を比較して答えますね。

全ての項目で何かしらの影響は受けています。でも特に影響を受けたのは、3)自分でやっていける力、4)進路・目標、6)その後の人生に活きた人脈ですね。

3)    自分でやっていく力
NICEの職員になってから、グループワークキャンプの引率でインドネシアへ行ったとき、大学生のインドネシアボランティアのお家にホームステイをさせてもらったことがありました。部屋の中には、机と少しの本と着替えがあるだけでした。インドネシアは気候が一定なのでものや服が少なくて済むのもあるかもしれませんが、これだけのもので暮らしていけるんだってことに気づかせてもらいました。物は少ないけれど、みんなのんびりと幸せそうに暮らしているんです。生きていくうえで、本当にいるものって少ないんだなと思いました。

日本で生まれ育っていると、例えば洗濯用の洗剤がなくなったら、買ってこないと洗えないと考える人が多いと思うんです。石鹸で洗えばすみますよね。もちろんこれは小さなことですけど、全部がそろいすぎている今の日本では、一つ何かがないと困ってしまう人が多いと思うんです。洗剤じゃないとだめ、ふかふかの布団やクーラーがないと寝られない等、これはこれと考えずに、もっと柔軟に考えられるようになると、生きるのがシンプルになってきますし、物が少なくても生きていけることに気付けると思うんです。そういうのを「自分でやっていける力」というなら、身についたなと思います。

4)    進路・目標
エストニアの国際ワークキャンプは、NICEではない団体を通じて参加をしました。そこに参加していた別の日本人からNICEの事を教えてもらい、帰国後調べてみたんですね。ホームページを読んでいくと、まさにこれから私がやりたいことをNICEは取り組んでいました。それで、NICE関西オフィスに「NICEで働きたいんですが」と電話をかけ、岡山から大阪まで上京しました。当時職員だったごまさん(現NICE副代表、開澤裕美さん)とお会いし、職員としてNICEで働きたいこと、無給でも良いので関わらせてほしいことを伝えました。その思いに共感はしてくれましたが、やはり現実問題家賃や生活費を考えるときついのではないか?という話になり、まずはNICEの活動に参加しながら、職員募集を待ってみてはどうかと提案されました。それでしばらくは岡山で営業の仕事をしながら、週末ワークキャンプや合宿に参加をすることにしました。それから中長期ボランティアへ行ってみようと思って応募をしていた時に、職員の募集があるからと教えてもらい、中長期ボランティアはキャンセルして、応募をしました。

このように、ワークキャンプへ行ったことで、自分の人生や仕事が決まったということで考えると、これは間違いなく5ですね。

6)その後の人生に活きた人脈
人脈として活きているかはわかりませんが、楽しい仲間とたくさん出会うことができました。同じような価値観を持って頑張っている人達が、日本各地、世界各地にいるんです。いい仲間に巡り合えたのは、私の財産になっています。

先ほど進路・目標のところで、晴れてNICE職員になることができたということでしたが、その後4年ほどで職員を退職し、愛知県長久手町にあるゴジカラ村へ行くことにしたのはなぜですか?
東京という都会に住むことがしんどくなってしまったのもありますが、地域の人と、ボランティアをしたい人の間に立ってコーディネートする役割をNICE職員として取り組んできました。所謂中間支援的な役割ですね。今度は地域で活動するほうへ行きたいなという思いができてきたので、取り組める場所を探していたんです。愛知県長久手町にあるゴジカラ村は、私の担当場所でもありました。ゴジカラ村へ行く機会があった時に、NICEを辞めるんですけど、次に行く場所が決まってないんです、というお話をしたら、ここに来ないかというお話を頂きました。ゴジカラ村代表の吉田一平さんが、こういうんです。「地域のおっちゃん、おばあちゃん達が趣味で作っている野菜が家族で食べきれずに捨てられている。そういう野菜を買ってきて、お年寄りに食べさせたいんだ。あんたが一軒一軒リヤカーを引いてでも集めてくる。あんたが長久手の町を歩いたら、長久手の町に風が吹くだろうなー」と。「私、風になります!やります!」と次の瞬間には返事をしている自分がいました(笑)。もちろんお野菜を集めるだけでは、自分のお給料は賄えないので、老人ホームのキッチンで働くことにもなりました。

結構葛藤もありましたよ。ゴジカラ村で働く前までは、自分のやりたいことをやってきました。営業がやりたいから営業の仕事をして、NICEで働きたいからNICEで働いてと。でもゴジカラ村に来て、初めて自分がやりたいと思ってなかったことをやることになったんです。お野菜を集めに来たのに、特養でご飯を作ることになったんですからね。葛藤はありましたが、勉強になることや気づけたこともたくさんありました。

「人はみな、必ず老いて、死んでいく」ということです。

営業の仕事の時も、NICEで働いていた時も、パワーのみなぎった若い人達と接することがほとんどだったので、自分がそのうち歳をとることや家族の事とかを考える時間や機会がありませんでした。食事やトイレを自分でできなくなったとき、その人にとって幸せとは何か。またそういった人が大事にされる世の中にするためにはどうしたらいいか。図らずもやることになったおかげで、多くのことを学びました。

今後の展望は?
まずは和束に嫁ぐことになったので、嫁業をがんばりたいですね(おめでとうございます!)。

それと、和束で生まれ育った地元の方とお話した時に、和束の町の人口減少をどうにか食い止めたいと思いました。昨年生まれた赤ちゃんは、約10人だそうです。その方が小学校の時は、小学校自体が4つあって、同級生もたくさんいたそうです。でもすごい勢いで人口が減って、小学校が一つになり、今の赤ちゃんが小学校に上がるころにはひと学年が10人。でもこれって和束だけじゃないと思うんです。町がお年寄りだけになって、地元のスーパーがどんどん潰れて。何ができるか全然わからないけれど、何かやらないとまずい状態に日本各地がなっています。子ども100人産むとかはできませんので(笑)、別の現実的な方法で、同じ思いを持つ仲間や地元の先輩たちと何かを仕掛けていきたいと思っています。

また和束はお茶の産地としても知られていますが、グローバリゼーションの影響もあってか、農家さんの儲けは年々減っているようです。高いものより安く手に入る方が誰だっていいですよね。でも、労働に対する正当な対価を農家さんに支払わないと、農業をやる人がどんどん減ってしまうと思います。自分の口にするものを作っているということは、とても大事なことだと思うんです。私が出来ることとして、都市に住む消費者の立場の人が、農家さんと接する機会をもっと作っていきたいなと思っています。人はものを食べないと生けていけないのに、それがどこから来るのか、誰が作っているのかが見えている人って少ないと思います。農業に取り組んでいる人と接することがないから、若い人が就職活動をする時の選択肢が『会社員』になってしまっています。もっと色んな選択肢があることを小さいころから知る事ができたら、漁業・林業・農業を志す人がもっとたくさん出てくると思います。企業で働くことが合わない人って絶対いますよね。鬱で苦しんでいる人がたくさんいると聞きます。そういう人の中には、実は漁業・林業・農業があっている人もいるんじゃないかと思うんです。もっともっと色んな生き方があることを若い人が知っていたら、幸せに暮らせる人が増えるだろうし、和束のような田舎で暮らす人も増えるかもしれません。嫁として地域に溶け込みながら、若い人たちと手を組んで、地域づくりに取りん組んでいけたらと思います。

最後にメッセージをお願いします。
メッセージ欄に書いたことが全てです。先日メキシコへ大学生のグループと一緒に行き、これからの若い人たちには「自分で考えて行動できる人」になってほしいと心から思いました。日本人は群れる習性がありますよね。誰かと一緒に動いていれば安心だし、自分で考えで自分の力でどうしようという考えにならないんです。だからパック旅行が人気なのかなと思います。ワークキャンプは、「何があるかわからないけど、なんか楽しそうだからやってみる」感じですね。もちろん大変なこともありますが、得るものも多いと思うんです。自ら考えて行動して得た経験は、自分の力になりますよ。NICEには、様々な行動を起こしている人達がいます。そんな人たちと繋がりながら、一緒に何かに取り組んでいける場所です。
人は必ず老いていき、死んでいきます。生きてさえいれば大概のことは何とかなる。一度しかない人生、ココロがわくわくすることを、迷わず思い切りやってみましょう。

穴竃美和さん
2012年9月15日(土)14:00-@亀山