体験談・岩手山

 
『初めての東北 ~子どもキャンプ~ 』

 初めて東北地方に滞在してみて、人々が控えめで静かなやさしさがあるなぁと思った。
陸前高田の拠点であるお寺に泊まっている時、お寺の前の斜面をあじさんが草刈をしてくださっていた。手伝おうとお寺の草刈りガマを持っていくと、「その鎌を見せてみろ」と言う。
刃をさわって、「これじゃ刈れないから、研いできて明日持ってきてやる」のようなことを言って、じぶんの背中におさめてある代わりの鎌を貸してくださった。

 訛りが強くて、会話を理解するのに苦労したが、おじさんはその後斜面の下にある自分ちの梅をとっていいよと言ってくれ、外国人たちと一緒に取りにいった。するとそこでその隣のおばさんがきゅうりをくれ、梅の実の家のおばさんが「ウメみそ」はこういう風に作るんだよーと作ったものを下さった。なんだかとても温かい。陸前高田に駐在中のNICEスタッフミホによると、わざわざ訪ねてこない代わりに、こちらが外で何かしていると、その時にわーっといろんなものをくれるらしい。

 そういえば閉館時間間際の中尊寺に行ったときも、駐車場に私たちの車だけになり、(私たちは他のメンバーがトイレから戻るのを待っていた)係のお兄さんは「いつごろ出ますかー?」とか声をかけることなく、だまって鎖をもって待っていた。どちらも私のなじんだ関西エリアではまずこうはいかないと思う。

 いろんな面でもっと前に出てくるだろう。改めて、この地方に震災が起きたことについて考えてしまった。大変な体験をしながら、笑顔でキャンプに参加してくれた子どもたち。それを支える大人。復興への道のりは長いと思うけれど、この人たちならきっと乗り越えられる。そして少し遠くからではあるけど、ずっと、応援し続けたいし、心から祈り続けたい。