【対談記事】企業がボランティアをする、ということ

2020/03/06

 

【対談】企業がボランティアをする、ということ

 

 北陸にて企業としてボランティア活動を行っているジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ(以下、ジョンソン・エンド・ジョンソン)の金井悠介さんとNICE北陸事務局長水口に「企業が地域でボランティア活動を行う可能性」についてお聞きしました。

 

プロフィール

金井悠介さん

神奈川県出身。ジョンソン・エンド・ジョンソンにて勤務。同社の社会貢献委員会リーダーシップチームの一員として活動をリード。自身でもフィリピン、マレーシア、カンボジアでのワークキャンプなど海外ボランティアへ多数参加している。

北陸事務局長 水口実穂

兵庫県出身。北陸地域の豊かな自然と人柄に惹かれ、福井県に移住。地域の声を大事に、ワークキャンプを開拓中。地方事務局だからこその、地域との密な連携によるプログラムの質の向上と発展が目標。

NICEとの出会い

━ 初めに金井さんはどのようなきっかけでNICEと関わるようになったのですか?
金井 幼少期に多くの困難に直面した際、様々な人に助けてもらいました。自分も大人になったら、子どもを助けられるようなボランティアをしたいと考えていました。海外には大変な思いをしている子ども達がまだまだいると思い、当時住んでいた北陸で開催されていたNICEの説明会に行きました。

━ 説明会で水口さんと金井さんは初めて出会ったのですね。
水口 そうですね、2014年の冬に説明会でお会いして、最初は自分自身が海外にボランティアに行きたいとおっしゃっていましたが、ゆくゆくは企業として地域でボランティア活動したいという話になりました。現行の企業ボランティアだと、地方の社員が都市圏に行き活動をするものが多い、せっかく北陸に住んでいるのだからボランティアを通して地域にしっかりコミットしていきたいという話もお聞きしました。
金井 当時は駐在員として北陸に住んでいて、地域についてもっと知りたいという思いもあって、既存のプログラムではなく、自分たちでできることをしたいと考えていましたね。
水口 そんな話をしている中で、NICEでは、企業のニーズと地域のニーズをマッチングするグループワークキャンプをオーダーメイドで企画できますよ、という提案をさせていただきました。その日は紹介する程度で終わっていたと思いますが、後日金井さんから連絡を頂き、実際にどういった活動が地域でできるのかを教えてほしいという流れになりました。
金井 水口さんから北陸ならではの課題やボランティアへのニーズを聞いて、さらに関心を持ち、翌年2015年の年明けにジョンソン・エンド・ジョンソンとして初めて、福井県・勝山市にて雪かきボランティアを開催する運びとなりました。

打合せの中で新しい提案が生まれることも!
企業とNICEで信頼関係を築きながらプログラムを構築していきます。

初めてのボランティア活動

━ 初めてのボランティア活動はどうでしたか?
金井 初年度は自社の北陸在住社員を誘ってボランティア活動を行いました。勝山の地域の方と一緒に作業をし、食事の時などにコミュニケーションをとる中で、地域の課題についてお聞きする機会があり、少子高齢化などでコミュニティの維持が困難など日本特有の課題を感じました。

━ 限界集落だけでなく他の地域でも様々な活動をしたとお聞きしました。
水口 初年度の雪かきボランティアの後、ジョンソン・エンド・ジョンソンさんの、ヘルスケアの会社だからこそ福祉や子どもや医療に携われるボランティアをしたいという希望をお聞きし、福井県・鯖江市にてA型事業所で精神疾患をお持ちの方たちと農作業を行う活動を3回ほど実施しました。その他、昨年は石川県・大土村で、多文化理解のためのイングリッシュキッズキャンプを開催しました。
━ 企業や地域の特性に合わせながら活動も変化しているのですね。
水口 活動を始めた約1年半後には、名古屋や東京から北陸のプログラムへ来て下さる人もいて、参加者の幅も広がりました。北陸に住んでいる人が北陸を盛り上げようと思って始まった活動に、北陸以外から人が来ることによって相乗効果がありましたね。

2016年7月 石川県加賀市大土での活動。
無農薬栽培米の為、手作業での草取りが必要。

社内へのインパクト

━ ボランティア活動の社内でのインパクトはいかがですか?
金井 まず、ボランティア活動を通じて社内のネットワーキングができました。ジョンソン・エンド・ジョンソンはグループ会社で、事業内容ごとに複数の組織があります。所属する組織によって消費者向け製品・コンタクトレンズ・医療機器・医療品など、扱っている製品が違います。ボランティア活動を通じて、普段は仕事で関わることのなかった人との繋がりを持てるようになりました。 また、他の組織の人たちを巻き込んで、社内の様々な人たちと一つのプロジェクトを作ってマネジメントをしていくことで、リーダーシップをとる機会も持てました。仕事以外の場で、課題を見つけて、仲間を見つけて、解決に向かっていく力をボランティア活動通じて得ることができました。

━ 北陸から本社である東京に異動した後も活動を続けてこられてますよね。
金井 はい、地域でリーダーシップをとる人を立て、全社の社員を巻き込んでボランティア活動を行っていくRegional Ambassador(リージョナル・アンバサダー。地域に密着したボランティア大使の意)という仕組みを、本社への異動後に立ち上げました。駐在員がオーダーメイドでボランティア活動を始めたのは北陸が初めてのケースでしたが、他の地域の駐在員も地域に対して貢献したい人は絶対いると思い、サポートできる仕組みとしてRegional Ambassador制度を作りました。この制度を立ち上げることができたのも、NICEとの繋がりがあって一緒にやってきた実績があったからです。現在20名程度が全国各地で、Regional Ambassadorとして地域の課題に対してリーダーシップを持って取り組んでいます。

━ 北陸でのボランティア活動を始めたことにより社内にも、金井さん自身にもさまざまな変化があったのですね。このような活動を今まで続けられた理由を教えてください。
金井 当社の社会貢献活動は「我が信条(Our Credo)」という企業理念が根底にあり、地域社会への責任というところで信念を持って活動できている部分が大きいですね。社内では社会貢献活動の専任として従事する社員は3名しかおらず、他は「できる人が、できる時に、できる事を」しようというモットーのもと、社員が自分で時間をみつけてボランティア活動に関わるのが、我々の取り組みの特徴です。専任社員の他には社会貢献活動にリーダーシップを持って活動するリーダーが15人、チームメンバーが120名、Regional Ambassadorが20名。全員、本業の仕事を別に持っていて、できる時にできることをやろうという気持ちでやっています。

地域へのインパクト

━ 企業がボランティア活動するにあたり、地域にはどのようなインパクトがありますか?
水口 企業と活動をすることで地域への影響は大きいと思います。ボランティア活動自体はもちろん地域貢献となっていますし、同じ企業が定期的に、地域で活動してくれることによって、応援されているという気持ちになり、地域の活力になっているのではないかと思います。

2016年7月 石川県加賀市大土での活動。
参加家族の子どもたちと受入の方との触れ合いも新鮮。

━ 地域、企業ともにボランティア活動を通じてwin-winな関係性を築けているのですね。
金井 あとは、現場により近い人(地域に住んでいる駐在員)が声を出して活動を始めたことで、主体性や郷土愛が生まれたと思います。駐在員として移り住んでも地域との繋がりは、なかなか持てるものではないのです。それこそいきなり地域の寄合に参加するのも難しい。普段からNICEが地域の方と共に課題に取り組んでいるプラットフォームがあるからこそ、NICEを通じて、企業として地域に根差した活動ができています。活動をする中で、参加者自身も地域に対して愛が生まれたと思います。
水口 家族で参加される人が多いのも嬉しいですね。家族で来られて地域のここが良いよね、素敵だよねと言ってもらえるのは、ボランティアとは別にして地域にとっても、来てくださる人にとっても、良いことだと思います。副次的だけどそこに郷土愛が生まれていると感じます。

これからの展望

━ 来年で活動を始めてから5年目となりますが、これからの展望を教えてください!
水口 企業の専門性やスキルに合わせて、ボランティアワークをより進化させて地域と参加者双方に成果を成果を上げられるプログラムを創っていきたいですね。
金井 自分自身は異動で北陸から離れましたが、ボランティア活動自体は担当の社員に引き継いでいます。今いる社員と共に引き続き活動を盛り上げていきたいです!
 

━ 金井さん、水口さんありがとうございました!企業として地域でボランティアをすることによって直接的なボランティアワークの成果だけでなく、リーダーシップ力、主体性、郷土愛が生まれ、社内のエンゲージメントにもつながるなど、企業ボランティアの可能性を感じました。引き続きより良い事業を創っていきましょう!

聞き手:グループワーク事業部 太宰

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